野球のバッティング理論 青木賢樹

夏も終わりに近づき、なんとなく寂しい気持ちになってきています。現在は、たくさん本州に上陸してきている台風情報とリオ・デ・ジャネイロのオリンピックや、夏の甲子園の余韻に浸っています。後は、9月に開催予定の高校野球の秋季大会の開催を待ち望んでいます。

ただし、一番ショッキングな出来事は、平成28年7月26日の相模原の障害者施設での殺傷事件です。重度心身障害者の方々が、次々と刺され19人死亡され、26歳の元職員が逮捕されたと新聞で報道がありました。彼は、「障害者なんていなくなってしまえ」と供述している事件です。同じように医療に携わる自分としては、大きなショックを受けました。ヒトラーのような人種差別に近い思想に惹かれて、障害者は不要な人間であるとの考えのもとに殺人を犯したとの報道がされており、憤りと悲しさ、本人の愚かさ、未熟さ、浅はかさを感じます。このことは一度深く議論すべき問題であろうとは思いますが、今はその後の警察からの報道もなく、あまり自分勝手なことも言えないので、また分かり次第皆さんの御意見や考えなどお聞かせいただけますと幸いです。

さて、甲子園の高校野球の話に戻りますが、今年は、非常にピッチャーが良いとの評判で、大会が始まりました。しかし、夏の暑さや体力消耗もあるとは思いますが、時速150kmのスピードボールでも、最近の高校生はバットに当てて、打っています。すごいことですね。

しかし、野球をしていて、どうしたら打てるようになるのかは、バッティング理論が一番説明しにくい分野であると思っています。いかに飛ばすか、いつバットを振りだすかは、物理学的に説明は可能ですが、その微妙なバットコントロールを説明するには、時間が足りないですし、自分も理解していません。遠くにボールを飛ばすには、バットと球が、空気抵抗がなければ、45度で当たると一番飛ぶようです。つまりボールの中心のさらに下です。ボールとバットは、作用反作用が働いて反発して飛んでいきます。

その次には、ある程度のバットのスイングスピードがないと、ボールのスピードに負けてしまいます。スイングスピードが0km/hrのバントでは、投げたボールのスピードがもの凄ければ別ですが、ホームランはまず無理です。バットに当たったボールは、水平面を検討すると、入射角と反射角にて飛び出していきます。その角度は、バッターボックス(ホームベース)から90度がフェアグラウンドなので、左右中心から約45度ずつ(合計90度)のズレが許されます。(図1)

図1・入射角と反射角は同じハズ

<図1・入射角と反射角は同じハズ>


垂直面の計算では、ボールが上がる角度は45度が一番遠くに飛びます。初速が同じで空気抵抗がないと仮定すると、打ち上げる角度として一番遠くまで飛ばせる(投げられる)角度は45度であると、数学の計算式から導き出されます。体力測定や球技で、遠くにボールを投げるには、約45度で、放り投げることが一番距離を稼げる角度です。是非、子供さんにも教えてあげてください。ただし、40度でも50度程度でも、大きな距離のロスにはならないようです。多少の角度の差は、許容範囲のようです。(計算では、40度も50度も98.5%になる程度らしいです。−1.5%程度とのことです。)(図2)

図2・遠くへ飛ばせる角度

<図2・遠くへ飛ばせる角度> 空気抵抗があると、45度より、やや低めが良い。


ボールは、だいたい直径7cmなので、半分の3.5cmより下で、中心より下の2.5cmぐらいを打つのが良いようです。案外、下のような気がします。細かい計算が必要かもしれませんが、下1/3〜1/4程度を打つのが良いようです。そのあたりを狙ってバットを当てることができたら、より遠くに飛ばせると思います。ボールの芯よりやや下に当てることが遠くへ飛ばす秘訣でもあります。ボールの芯とバットの芯同士では、ライナーになりますが、遠くへは飛ばせません。無論、ライナーで野手の間を抜いていくのも良いと思います。(図3)

図3・ボールとバットの断面図の模式図

<図3・ボールとバットの断面図の模式図>案外ボールの下を叩くことが必要。少なくてもボールの芯ではありません。硬式ボールは、直径7.29-7.48cm程度、バットの直径は約6.6cm以下、バットの太いところのほうが、硬式ボールより小さい。(自分は、硬式ラケットぐらいの大きさでないと残念ながら、バットにボールが当たりません。)


ボールとバットがぶつかるスピードが、やはり速度の2乗で効いてきますので、スイングスピードも大事です。スイングスピードを上げるには、腰の回転が早い方が、バットも早く回り、振れるということになります。つまり腰を回転させる筋肉をつけることが大事です。回転させる筋肉は、右バッターであれば、左腸腰筋、左大腿二頭筋(左足を引き付ける筋肉)、右大腿四頭筋(右足を伸ばす筋肉=右腰を押し出す筋肉)、後は腹筋、背筋などです。腰を回転させる下肢の筋肉を使い、上半身を反時計回転に回して、その後上肢を脇につけて、バットを振り回していくこととなります。右バッターの左足は、横にそのまま出す感じで、足首はピッチャーと45度で対面するぐらいの位置です。あとは、腰を回して慣性の法則で45度から90度まで回す感じです。最初は、45度程度回せば良いと思います。

バットとボールは、角度は水平面では各々45度までは、フェアグラウンド内に飛んで行く予定です。ここでもバットスイングを早めるには下半身の筋力が重要です。ピッチングと同じですね。腰の回転に必要な筋肉を鍛えることです。

それと、よく動体視力が大事と言いますが、それも個人的には、慣れが大事だと思います。高速道路を運転中、最初は80 km/hrの速度で車道のガードレールが見えないと思っていても、しばらく運転していると、100 km/hr 〜 140km/hrでも、周りがゆっくり動いているように見え、ガードレールが見えてくることは経験することです。目が慣れるということなのだろうと思います。(確実に速度違反ですので、くれぐれも出さないようにお願いいたします。自分が出しているわけではありません。推薦もしていません。)つまり、速い球でも見慣れるとついていけると思います。特別にある人だけが凄いということは人間的にはありえない(人間の機能的にはおそらく平等)と思います。速い球を見る訓練(早く流れる風景を見慣れること)は必要です。

そして、上下動するスイングは、ひいては頭も上下動することになり、投げられたボールの位置を捉えにくいので、右バッターなら、あまり大きく左足を上げて踏み込んだりはしない方が良いと思います。疲れていないうちはバットに当てられても、試合をして疲れてくると微妙に踏み込みの幅が短くなったり、体の上下動でバットに当たる位置が微妙に違ったりと、常にはうまく打てないと考えられます。素振りであまりに頭が上下動する人は、注意してなるべくしないようにすることが大事です。プロ野球選手でも足を上げて、頭が動いている人がいます。でも上手に打っているので、ちょっと理論とは違いびっくりですが、打てない時期のスランプが長くなったり、年齢と共に筋肉が衰えた時などに打てなくなるのではないかと思っています。

ただし、バッティングの妙として、このようなことだけでは決まらないことがあるのが面白いところです。ボテボテのゴロでも、野手の間に転がればヒットになるし、ちょこんと出したバットでも、内野手の頭を越えれば、またヒットになります。難しいボールには、そのようにバッティングを変化させても良いのが、面白いところです。いつもホームランは打てないことは、当たり前と考えられています。動いているボールに自分のバットを動かしながら(スイングしながら)当てることは、一番説明が難しいところです。でも、だいたいは、バッドにボールは当たるようになっているとしか言いようがないようです。ここが一番肝心ですが、説明も難しいところです。

球筋の問題では、直球はその軌道がわかれば当てやすいと思います。高校生でも、150 km/hrのスピードボールでも、当てていくことが可能と想像されます。150 km/hrでも130 km/hrでもそれほど差があるとは思えないので、ただ速い球というだけでは、びっくりしない方が良いと思います。同じように、カーブ、シュートなど、回転するボールも球筋が分かれば、当てやすいと思います。むしろ、回転しないボール(フォークボール、ナックル等)や、回転がその都度違うボール(チェンジアップ、ツーシーム等)などは、当てにくいボールとなり、当たってもアウトにしやすいと思います。

バッティングに関しては、70%失敗しても良くて、30%成功で尊敬されるのが野球というスポーツなのですから。

また、秋季大会を応援しに行きたいと思います。2年生と1年生の新しいチームの活躍を楽しみたいと思います。頑張れ、高校球児たち。